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夜空を見たいと思って、二階の自分の部屋に行く。
薄暗く、もやのかかった世界。
この世界全部が、フォグブルー色。
それはみんなが首をひねる、僕にとっては普通の世界。
ぼんやり考えて、ふと手に持ち続けていたメガネのことを思い出した。
『あなたが思うことは、ある意味でただしい』
なんのことだろうか?
ある意味でただしいとはどういうことなのか。そもそも僕は少女とまともに話をしていないのに、ただしいもただしくないもあるのだろうか。
『もしかしてあなたは光を見分けられない目の障害があるの?』
障害ってなんだろうか。
僕は少女にもらったメガネをかけ、夜空を見る。
メガネをかけたその瞬間、視界を疑った。
息を、呑む。
本気でタイムリープしたかと思った。
このメガネをかけると、フォグブルー色の世界が煙をまいたかのようにしゅっと消え、月に照らされた夜空は鮮明で、夜空には滲んだ青色の部分もあって、小さな小さなきらきらとした光がある。
あれが。
夜空に星があることはもちろん知っていた。でも、人に聞いただけで見たことはなかった。
星はオーロラみたいにめったに見られるものじゃないと思っていたけど、今日はついているということなのか。
いや……いつもとは限らないけど、星はきっとそこにあったんだと思う。
僕はメガネを外してみる。
いつものフォグブルー色の世界。
もう一度メガネをかけてみると、
誰かが話していた夢物語の世界が分かる。
みんなが言う朝は明るく、
みんなが言う昼は朝より明るく、
そしてみんなが言う夜は暗い。
暗いの意味がようやく分かった気がした。
暗いってこんなに綺麗なんだ。
思わず口角が緩む。
メガネをかけたら
夢でもみているような
あたたかみのある色彩の世界が見えていた。
星も今なら夢物語じゃない。
メガネをかけた僕の視界。
これがきっと、みんなが見ている普通の現実なんだ。
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