占い師マキラは亡国王女

2/6
前へ
/108ページ
次へ
 この世界に、国は一つだけ存在する――。  世界統一国・シャバハーザ。    度重なる国同士の世界魔法戦争。  その戦いを勝ち続け、世界統一を果たしたのは若き覇王だ。    今まで国を治めていた国王や皇帝達は領主となり、国々は地域という呼び名に変わった。  灼熱の地域・エイードの首都は、マキラ達の住む、暑く情熱的な街・ボワイージュ。  覇王の出身地であり、軍部である城と覇王の住む宮殿がある街だ。  砂漠に囲まれながらも豊かなオアシスがあり、沢山の人々が生活している。  スパイスの香りと丸いパンの焼ける匂いが大通りに流れ、活気ある露店が並び、弦楽器と太鼓の情熱的な音楽、つられて歌い踊る子供達の笑い声。  土埃の風が吹くなかでも、戦乱の世が終わったことで皆の笑顔が印象的だ。    だが世界統一されて平和が訪れても、日々働かなければ生きてはいけないのは同じだ。  そして若い女性たちは、熱い恋をする。    「マキラ先生、彼と復縁することはできるでしょうか?」  ハンカチで涙を拭く、相談者。  顔は歪んで、辛そうだ。  色々と長い話を聞いてから、マキラは口を開く。 「貴女が彼と別れた理由を忘れたの……? 酷い暴言に暴力、やっと逃げられたのに復縁を望むの?」 「でも、だって、やっぱり彼がいないと私はダメなんです! マキラ先生、どうしたらよいのか未来を私に教えてください!!」    水晶玉に手をかざしながら、マキラは泣く女性へ優しく語りかける。 「……貴女は彼がいなくても大丈夫。今はまだ心が慣れていないだけよ。ねぇ、機織り物のコンクールが開催されるの知ってる?」  悲しく絶望の空気が、少しずつ温かみを帯びていくようだ。 「え? 機織り物コンクール? 知りませんでした」  女性が反応したことを、マキラは見逃さない。
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加