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「貴女の機織り物の技術は素晴らしいわ。優勝すれば覇王様からの褒美があるらしいの。謁見もできるってよ。集中して挑めばいいわ」
「覇王様からのご褒美!? え、謁見まで!?」
「そうよ。貴女は、覇王の大ファンでしょ?」
覇王は、世界平和の象徴であり神の力を得た男と言われている。
彼を神として崇める人までいる今――。
一般庶民が謁見できるなど、夢のまた夢だ。
「大ファンどころか信者ですから!! わぁー覇王様に会えるかも!? 覇王様の生誕祭では、パレードがあるけど、遠すぎていつもお顔は見えないし……えぇーそんなコンクールがあったなんて!!」
女の涙が引いて瞳が輝きだしたのも、マキラは見逃さなかった。
「私はパレードは見た事ないけど、ものすごいお祭りだものね。ねぇ? コンクール挑む気になってきたでしょ?」
マキラは他にも、コンクールに出た場合にどんなポジティブな良いことがあるかを彼女にゆっくりと伝える。
それは枯れかけた彼女の花に、水を注いでいるようにも見えた。
「先生……私は、コンクールでの優勝はできますか……?」
「脇目も振らず、一心に取り組むのよ! 貴女の実力ならばきっとできるわ!!」
「やってみます!! それじゃあ糸を選びに行かなきゃ!! じゃあこれ、お代です! いつもありがとうございます!」
「えぇ。頑張って」
泣いていた女は、パッと表情を明るく変えて、天幕のかかった部屋から出て行った。
マキラは、ふうっとフェイスベールを外して頭を覆うベールもとった。
美しい薄紫のロングヘア。
長いまつげに、ぱっちりとした猫のような瞳は淡桃色だ。
整った唇で、グラスの水を飲む。
「依存って、依存先を変えるだけで案外すぐに吹っ切れたりするのよね……あんなバカな暴力男なんて、一生懸命に布を織ってたらすぐ忘れるわ」
彼女がズタボロになって、マキラの元へ来た時……絶対に助けると誓った。
それから数ヶ月かけてようやく別れたとホッとしたのに、復縁したいだなんて……。
呆れる気持ちも少しはあったが、彼女にはまだ自分を支えてくれるものがあった。
きっと彼女は大丈夫、そう思ってマキラは水を飲み終え微笑んだ。
そんなマキラには、実は秘密がある――。
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