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「マキラ愛している」
「……私も……」
一夜限りと言って、シィーンも同意した。
だけど彼はこの一夜で、マキラにありったけの愛をぶつけ、優しく情熱的に彼女にわからせた。
マキラの身体にはしっかりと、シィーンの愛が刻まれたのがわかる。
望むままに……と言って、離れられなくさせる……。
「ずるいわ……」
「ふふ……なにがだ……?」
そして、ふと彼が太陽の光に照らされたマキラの肢体を撫でている事にも気づく。
隠していたかった白い肌が顕になって、マキラは恥ずかしさもあってすぐに隠した。
「あ、やだ!」
「あぁ……まだ眺めていたかった……美しい君の身体を」
「もう! シィーン……貴方って何も……聞かないのね」
「君も俺に何も聞かない」
そうだ。
お互いに何も知らない同士。
それなのに、こんなにも惹かれ合い、愛し合ってしまった。
「……シィーン……」
でもマキラは決めたのだ。
この街から離れると……知られるわけにはいかないし、知るわけにはいかない。
知れば知るほど……きっとシィーンに魅了されて、この愛に堕ちていく。
「マキラ……俺達はもう離れられない」
「……でも……ダメなのよ」
瞳に頬に口づけされながら、マキラは言う。
このまま城に強制召喚されて、元帝国の姫の占い師になるなんて絶対にできない。
逃げたとわかれば、お尋ね者になるかもしれない。
気付かれる前に逃げなければ……。
「さっき下に水を取りに行った時、君がこの家を離れようとしている気配を感じた」
荷物を少しずつ処分し、まとめようとしている事にシィーンは気がついたようだった。
「……そうなの……だから一夜限りだと」
「何故、此処を離れる? 君にそんな顔をさせる全てから俺が守るよ」
「シィーン」
「だから、今は聞かせてくれ。何から逃げようとしているんだ……?」
いつも微笑みながら冗談を言う男だが、今は真剣な瞳でマキラを助けてくれようとしているのが伝わる。
マキラだって、こんな不条理な事を一人で抱え込むのは辛かった。
一夜限りで何も知られずに……と思ったのに、もうシィーンに話したくなっている。
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