29人が本棚に入れています
本棚に追加
「え……虎の子供……?」
庭を歩いていくと、真っ白でふわふわな虎の子が二匹。
シィーンに飛びつくように走ってやってきた。
「あぁ。仔虎だ。おい、俺の恋人のマキラだよ。ティンシャーとバグガルだ。この時間は好きにさせているんだ。君にも紹介したくって」
「なんて可愛らしいの。虎を飼うなんて、すごいわ」
ぴょんぴょんと二匹は、シィーンの周りを飛び跳ねる。
「親虎が亡くなって孤児だったのを拾ったんだ。飼うというか、俺がいつも遊ばれているんだよ」
「ふふ、可愛い。私も遊びたいわ」
「二匹に嫉妬するのはごめんだよ。まずは俺と愛し合うんだ」
「もう、仔虎に嫉妬しちゃうの?」
「するさ」
「ふふ」
二匹を連れながら、シィーンはマキラを抱いたまま屋敷へ入る。
煌めくシャンデリア。
壁には複雑な模様が美しく描かれている。
海外の物と思われる絵画に、壺や、宝石があしらわれた像。
そのまま豪華な芸術品が飾られた大理石の廊下を、歩いていく。
「素敵……!」
輝く豪華絢爛な屋敷に、マキラは感嘆の声を挙げた。
庭が綺麗に見渡せる大広間には、伝統的な絨毯が敷かれ、長いローテーブルには沢山の食事と酒が用意されていた。
ふかふかのクッションに優しく降ろされる。
降ろされたマキラに仔虎が二匹とも飛びかかって、しばらく二人と二匹でじゃれ合い、遊んだ。
「お前たち、餌の時間だよ」
どこかでチリンと鈴の音が鳴ると、二匹は遊びながら去って行く。
お世話係がどこかにいるらしい。
「あぁ楽しかった! とっても可愛い子たち。それに素敵な絨毯に、贅沢な家具……美味しそうな料理に……此処は魔法か、夢の世界?」
「気に入った?」
「なんだかびっくりしちゃって……豪華絢爛とはまさにこの事だわ……」
圧倒してしまってマキラは、はぁ……と息を吐く。
王女だった頃も、こんな豪華絢爛な宮殿には住んでいなかった。
「君を喜ばせたくて、つい張り切ってしまった。こういうのは苦手じゃないかい?」
「慣れていないだけよ。シィーンの気持ち、とても嬉しい。私のためにありがとう」
「君が喜ぶことを、なんでもしたい」
シィーンが微笑んで、二人はまた熱い口づけをかわした。
最初のコメントを投稿しよう!