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でも、シィーンは何も知らないから……。
自分は亡国の王女で、先読みの力がある。
その力を持っていることで、帝国に根絶やしにされかけた命。
世界は統一されて、平和にはなったが、こんな運命の女が日なたで生きていけるのか……?
結婚をすれば、子どもも望まれるだろう。
もしも二人の子どもに、先読みの能力があったら……いつかバレてしまう。
彼の血族との縁もできる……。
一体なんて説明をすればいい?
シィーンの言葉は嬉しい、信じたい……でも……。
「……あの……シィーン……」
嘘はつけない。
……でも、何も言葉にできない。
深い紅色の指輪はリングケースに入ったまま、誰にも触れられずに……キラキラと輝く。
「……君は俺に何も聞かないが、俺は何を聞かれてもいいよ」
「でも……それじゃあ……私……」
何を聞かれてもいい。
そう言われても、今のマキラは自分のことばかり考えてしまう。
家族は? 生まれは? どうやって過ごしてきた?
絶対にいつか疑問に思う!!
何一つ、正直に答えられない。
「俺がいいから、いいんだよ。でも俺からは何も聞かない。マキラ、まずは此処で一緒に暮らさないか」
「え……?」
シィーンは、マキラの手を優しく撫でる。
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