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「本当は凄いモテるでしょ」1
「えー? 東雲、カラオケ行かないのかよー」
「俺とデュエットしようって言ったじゃんー」
ぶーぶーと口を尖らせたおいちゃん&その他達に「めんご! またね!」してそそくさと離れた。こういうのは引っ張っても良いことないからね。さっき声をかけてくれた同僚はいなくなってたけど嘘ついたのがバレるの嫌だし帰る。カラオケとスイーツは後ろ髪引かれるけどそれはまた次の機会に。
あ、そう言えば柚木君に何も言ってないや。メッセージ送れば良いか。…それで良いのかな。それとも不要? と、眉間に皺を寄せた瞬間に腕を捕まれた。
「東雲さん、これから女子会なんですか?」
思ってもいなかった声に振り返ると柚木君がいる。あれ? カラオケは? …っていうか。
え? 怒ってる?
「…え? え? な? 何でそんな事知って…」
「襖ちょっと開けたら丸聞こえでしたよ」
「あ」
あー。そうか。柚木君、入口付近に座ってた。と、さっき姿を探した時の記憶を思い出す。それで盗み聞きしたの? …別にそれは良いけど。
…だから何で怒ってるの?
「で? 本当に女子会?」
「…あ、の…?」
「彼氏に嘘はいけないんじゃない?」
そんなの、だって今日会おうって言ってたんだから嘘だって知ってるでしょ? 何でそんな事聞くの。
「違う…けど…」
「ふーん?」
怖い。え? 怒るところある? そう思っていたら掴んだ腕を持ち上げるように歩き出した柚木君に引っ張られた。
「え? どこ行くの?」
駅とは反対に歩かされて柚木君に聞いたけれど返事してくれない。
「ああいうの、随分慣れてるみたいですね」
それで怒ってるの? そりゃ、楽な相手と思われて声をかけられることは多かったから多少場慣れしてるかもしれないけど駄目だった? 何が気に入らないの? ちゃんと断ったじゃない。
だからどこに行くの? …え? えええ?
「…え? え? え?」
そして引きずり込まれたのはラブホテル。こっちの意見なんか何も聞かないでどれでも良いとばかりに部屋を取るとそこに押し込まれた。
「柚木君?」
振り返るとそのまま壁に押し付けられて柚木君が低い声で言う。
「東雲さんさぁ、本当は凄いモテるでしょ」
「…は?」
…いいえ。と、首を振った。今まで一人も彼氏いない時点でお察しじゃない? 何でそんな事聞くの?
「本当に?」
うんうん。と頷いた。
「ふーん」
そう言いながら柚木君の手が服の中に入ってきた。
「ちょ…っ」
「自覚無いんだ」
「んん…っ」
触られながらそんな事言われても答えられない。体が密着するくらいに腰を抱かれているから逃げられない。隠れるように彼の服に顔を埋めた。
「ほ…本当に…モテてなんか…」
「じゃあ、今まで何人の人に告白されたの?」
「ん…っ」
直接胸を弄りながら耳元でそんな事を言う。やめてやめて。どっちかにして。また首を振った。
「覚えてない?」
本当はそう。だって本気か冗談なのか分からないことも沢山あったから。ちゃんと言ってくれた人もいたけれど、そんな事言ったらもっと怒られそうだから言いたくない。
…ねぇ。何で怒ってるの?
「…そりゃーそうだよね。性格も良いし可愛いし、誰も気付かない訳ないや」
何も答えてないのに察したみたい。隠れていたのを咎めるみたいに離れて、泣きそうになっている自分の目を覗き込んで呟いた。
「キスは?」
「…え?」
「した事あるの?」
「…」
何でそんな事聞くの? 涙目で固まっていたら柚木君が笑う。
「あるんだ?」
答えなかったら全部肯定になる。そりゃ、そうなるけど。
もうどうしたら良いのか分からなくて黙っていたら柚木君の声が聞こえてきた。
「何で?」
「あ…」
指で口を開けさせて柚木君が呟く。何が何で?
「東雲さん、彼氏いたことないって言ってたのに何でキスはした事あるの?」
「…な…何で怒ってるの?」
「怒ってない」
「怒ってるじゃない」
「本当に怒ってない。面白くないだけ」
そう言ってキスをされた。舌が入ってきてぞくぞくっと体が震える。
「ちゃんと答えて」
「…ふ、不意に、され…て」
「それ一回きり?」
うんうん。と、頷いた。
「そいつとはそれっきり?」
うんうん。
「じゃあ、体に触れたのは俺だけ?」
「あ…っ」
さわ…っと指が肌を撫でた。体が強張って、次の刺激に怯えるけれど必死に頷く。
「こういうキスも?」
「…んん…」
また舌を絡められて必死に応えた。本当に許して。そんな事答える余裕、もう無い。
「ひ…っ」
首筋に舌が這って悲鳴を上げた。その体を体で押さえ付けるように密着して手も体を探ってる。待って。ちょっと待って。と言いたかったけれど声も出せなかったし、やっぱり怒っているみたいだったから言えなかった。暫く好き勝手されて、足から力が抜けた体を支えてくれた柚木君が言う。
「ベッドに行こう」
「あ…」
やだ。こんな体で。そう言おうとしたけれど何も言わせて貰えなかった。押し倒されて食べられるみたいに肌に歯を立てられて動けなくなった。
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