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M県のとある山麓で、黒いコートを羽織った男女が大きな荷物を持って歩いていた。
鞄の中には分厚い本や銀のナイフなどが入っていて大層重たく、黒いヴェールを被った女は今にも倒れそうだった。
その様子に気づいた銀髪の男は、女から荷物を奪った。
「ありがとうございます」
「気にしないでくれ。君をここまで連れて来たのは、他でもないこの僕なのだから」
鬱蒼と茂る山の木々は、雫を垂らして地面を濡らす。じっとりとした地面は、独特な匂いを周囲に充満させている。
「この山奥に、悪魔によって穢された教会があるんだそうです」
「……日本に悪魔なんて全く信じられない話だよな、シスター・クレア。日本といえば神道だろう?」
銀髪の男は、同意を求めているようだった。
「そうとも言い切れませんよ、ジャン神父。この国にはずいぶん前から主の教えを広める宣教師が入国していますからね」
「それもそうか……。まぁ、司教の命令だから本当なのだろう」
二人はぬかるんだ地面に苦戦しながら、山の奥地へと進んでいく。
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