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恵理と丈司を見送り、後ろを振り返る。
——彼はあの一瞬で気づいてしまったのだ、ある悲しい事実に。
「ジャンさん、クレアさん……」
二人は悲しそうに目をふせ、こう告げた。
「……僕らは百年前に故郷のヴァチカンから依頼を受けて、この教会にきた。そして悪魔祓いに失敗して死んでしまったんだ」
「それが心残りで私たちは現世にとどまってしまい、天国へ行けなかったのよ」
何と言ったらいいか、分からなかった。
「でも、これでこれでやっと終わりましたね、神父様」
「そうだね、クレア」
二人は顔を上げる。
頬には赤みが差していた。太陽の光を受け姿が徐々に薄くなっていく。
「遠藤くん、さよならの時間だ」
消えゆく二人を見て、朝陽は涙目で言った。
「ありがとう、ございました」
——こちらこそ、ありがとう。
二人の最後の声は、山の湿った風に溶けていった。
End.
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