山の神様

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「ふぅ…何回登っても疲れるな」 ひんやりとした風が吹く中ベンチに腰掛け雄大な景色を眺める。この山頂から見える景色は疲れを忘れさせるくらい綺麗だ。 眺めていると心が洗われて綺麗になっていくような気がする。 山はいい。 全てを包み込んでくれるような、どんな人間でも受け入れてくれるそんな安心感がある。 あることがきっかけで毎週この山に登るようになってかれこれ一年にもなる。 元々登山は趣味じゃなかったのに今や生活の一部になりつつあった。 39歳になり会社では重要な案件を任されるようになってからは上からの重圧と下の世代の指導とで押しつぶされそうになる時もあるが山に登ると憂鬱な気分が幾分かはましになる気がする。 最近の若い世代はなにかとパワハラだセクハラだの敏感な奴が多いからいちいち細心の注意を払いながら接する必要がある。 俺の時はパワハラなんて日常茶飯事だったのになぁなんて思うのは俺が歳をとったせいなのだろう。 「こんにちはー!また会いましたね」 「あぁ確か先週もここで。お互い精が出ますね」 こうして挨拶を交わすくらいの顔見知りも出来た。 体力もつくし自然に触れ他者とも交流できる、登山というのはいい趣味なのかもしれない。 おじいさんおばあさん、若いカップル、小さい子供を連れた家族連れなど様々な登山者を見るとこの山は老若男女問わず気軽に登れる山なのだろう。 山頂でコーヒーを飲みながらぼーっと人間観察をして仕事のことや将来のことを忘れてリフレッシュして下山する。 これが俺の登山ルーティンだ。
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