詩「古い雪」

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線一本から伝わる 指先のかすかな不安 年賀状を持つ手が揺れる もう幾日と会っていない誰かの夢に 夕暮れに乖離していく現実 埃の残り香が 雪のように落ちて 積もる歳月の 失っていくものだけが 溶けることもなく ただ冷たい 糸が切れたように 電話が途絶えた 耳鳴りの余韻は 冬だからじゃない 静寂に聞こえる 張りつめた音 沈黙の言葉だ 白い空を眺めて 窓の外を歩く人が 煙草を口にしているかのように 白い息を吐く 夜明けの瞬間だった 太陽が煌々と照らす前に それらが汚れてしまう前に ふっと溶けるように消えていく
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