死神と誰かの記憶

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死神と誰かの記憶

『 ……!? 』 何故こうなっているのか理解出来なかった 痛みよりも先に、腹に感じる熱とドロッと溢れる赤い液体は俺の身体を染めあげる 一瞬聞こえた音は俺が知るには余りには非日常的な音で此所が日本だと一瞬疑いたくなった 『 ガバッ…… 』 口から血を吐き、地面に膝を付き自ら流した鮮血の上に身体を倒した 突然と現れ、俺の腹に風穴を開けた男は黒いロングコートに羽織り、踵の有るブーツを履き、短髪の黒髪にヴァイオレット色の瞳をしている その男が一瞬何かを呟いた気がしたが何も思い出せずに冷たく暗い中へと飲み込まれていく フッと飛んでいた意識に我に変える 辺りを見渡せば俺が先日、配属されたばかりのビルの一室のオフィスである 外は普段と変わらず人々が……いや誰も歩いては居なかった 取り残された様にポツンと俺はオフィスの机の前に立っている だが違和感はある、それは俺は此処から…… 「 あらら、此処かぁー 」 バンっとオフィスの扉が開き急に現れた男は金のパーマのかかる髪をし俺に近付いてきた 英国風の男は真っ白なスーツに身を包み笑顔を向ける 『 なっ、誰なんだ!? 』 「 まぁまぁ、そう気を荒げずに……ね? 」 『 !! 』 一瞬見えた男の持つ道具はゲームの中にでも出てきそうな程に自在に動きそして俺の腹を貫いた ほんの僅か前にもこんなことがあった気がするが何も思い出せない 「 おい、話を聞いているのか? 」 『 えっ?あ、すみません…… 』 聞こえてきた声に視線を向ければオフィスに座る男は考え事をし動揺した俺に溜め息を吐いた 「 御前、名前はなんという? 」 男の俺からでも見惚れる程にサラサラの黒髪の短髪にヴァイオレットの瞳をし堀の深く鼻筋が高い整った顔立ちをしている 平凡な俺とは大違いだと見ていれば、名前を問われた事を思い出し直ぐに告げようと口を開き、そして閉じた 『 あれ…… 』 自分の名前が思い出せなかった 喉に触れ名前を発しようとするも声は空気のみを出す 動揺し目線を泳がしていれば男はじっと俺の方を見て名前を発し答えが出る迄待とうとしてくれるのが分かる けれど、俺は自分の名前を思い出せない 其よりも何故、此処に居るのすら分からない 「 ダメか…… 」 ポツンと呟いた男はゆっくりと椅子から立ち上がり机の前に立つ俺の横までやって来た 178㎝の俺より10㎝は高いだろう身長差を僅かに見上げてくれば喉に手を当てる俺の頬へと触れてきた 『 なっ!? 』 急に男に触られて驚くものは居ないだろ、触れられた事に目を見開き下がろうとするも其処は机で、自然と尻はつく 「 そう逃げる必要はない…… 」 『 逃げるって……知らない男に触られたら誰でも逃げるだろ!? 』 俺の頬に触れていた手は行き場を無くし変わりに顎を持ち上げられ顔は近付く 何がしたいんだと顔を背けていればちゅっと聞こえたリップ音に目を見開いた 『 っ!!? 』 「 逃げる必要はない.. 」 二度目の同じ言葉は痺れるほどの低ボイスで囁かれた時には俺の腰は名前も知らない男に抱き寄せられていた 俺の人生は振り返れば余りいいことは無いほど平凡であり彼女すらも直ぐに別れて居なかったと思う 『( 嗚呼、此はきっと夢なんだ )』 こんなイケメンの奴に俺がキスされる筈も無ければ触られる筈もない なら夢なら身を委ねていいかも知れないと耳に唇を触れ、そのまま口付けを交わす男を受け入れた ホモじゃ無いし軽い男でも無い筈なのに何故か男のキスは心地好く、何度も触れ重なる唇から割り入る舌は歯並びを開きそのまま此方の舌を探り始めた 『 ンッ、はぁっ…… 』 甘ったるい口付けと絡み合う舌先が触れる度に胸が暖かいような安心感に目を閉じ男のスーツの胸元を掴んだ 片足を俺の股に埋め膝で中心部を持ち上げられる感覚に息を吐く 腰からぞくりと震える痺れ、舌先は外れ銀の糸は繋がった 簡単に開かれた前のスーツと乱れたカッターシャツの中に手をいれた男は首元へと顔を埋めた瞬間に俺は真っ赤に染まった視界に眉を寄せる まただ、この感覚……
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