死神と誰かの記憶

2/8
前へ
/8ページ
次へ
ゆっくりと目を覚ませば見覚えの無いオフィス、いや廃墟と言っていいほどボロボロの状態だ また、何処かのビルの一室かと辺りを見渡せば端に膝を抱えて座り込んでいる少年を見掛けた ストレートの薄いアッシュグレーの髪色に白いシャツと青い短パンを履いている こんな場所で一人で大丈夫なのかと近付こうとすれば壊れた入り口から中年の男が入ってきた 中年の男は俺に気に求めず幼い少年へと近付いた 何かを話してるようで話してない、 何も聞こえない声に胸の中の靄は濃くなれば背後から踵のあるブーツを鳴らす足音に振り向いた 『 御前は……なぁ、此はどう言うことなんだ……なんで 』 少年は中年の男によって手を引かれるまま外へと連れ出された、何かを叫んでいた筈なのに聞こえなくて 俺は目の前に立つヴァイオレッド色の瞳をした男を見上げた 何故か、さっきよりも身長が高く見えることに疑問になりながらも 男は目線を外すことなく俺に腕を伸ばせば抱き寄せた 「 ……安心しろ。俺は御前を守る 」 『 守る……? 』 其処で気付く、俺の身体は若い少年のように16歳程度の身体だということに 男は何度か俺の髪に触れ目線を合わせれば答えた 「 嗚呼、其にはもっと御前の深い部分が知りたい……悪いな…… 」 眉を下げた男は俺の首へと噛み付いてきた 痛みに目を見開き服を掴む 『 っ…… 』 喉に溜まる血の感覚と苦しさに涙を流し意識を手離した …… ………… ◇ 腕の中で倒れる少年を抱き口元に流れる血を手の甲で拭けば背後から足音が近付く 「 さっさとやれ 」 「 はいよ 」 金髪の男は白いスーツの腰にぶら下げた刀を引き抜けば背中から胸元へと突き刺した 「 っ…… 」 「 俺も"何度"もこれやるの辛いんだけどね…… 」 口から溢れる血にもう少し心臓を狙えと言いたいが喉に溜まる血で声は発せれずゆっくりと眠る少年の額へと口付けを落とす 「 ....すまない、もう一度だ 」 流れる血はその場に水溜まりを作り俺の意識は薄れた …… ………… また、目の前の机には男が座る 何処かでみた顔立ちのいい男とは違いごく普通かそれ以下の中年の男は持っていた紙を投げてきた 「 御前は今日からクビだ、もう来なくていいぞ 」 『 え?あ、はい…… 』 そう言えば俺は会社をクビになったんだと床へと落ちた書類を持ち上げようと手を伸ばせば急に身体は重くなる 『 っ!! 』 目の前の書類は赤く染まり、そして先程のクビを告げた中年の男は床へと倒れていた 「 警察だ!! 」 『 違う……俺じゃ、ない……俺は……やってない!! 』 オフィスに入ってきた数名の警察官に取り抑えられその場に膝を付き押さえ付けられた俺は只自分の無実を訴える けれど答える者は誰もいないまま押さえ付けられた痛みに顔を上げれば女の人の声が聞こえてきた 「 どうやら此処が境ね 」 警察の声は全く聞こえなくてなったのに自棄に女の声は耳に入る 金のロングのウェーブのかかる髪にブルーの瞳を持つ綺麗な女性は俺の方へと近付いて来た 『 だれ…… 』 「 貴方を殺す、人 」 向けられたのは日本には不似合いのもので、目を見開いた時には引き金は引かれていた ズダンと発砲音と共に倒れた俺に女は腰に手を当てたまま小さく笑った気がした 分からない、何も…… 「 御前、名前は? 」 『 え? 』 目の前のヴァイオレッド色の瞳をした男は名前を問い掛けてきた 一瞬何処か考えてた俺はハッと我に返りオフィスの机に手を当てて問われた言葉とは別に告げる 『 俺は誰も殺しちゃいない!! 』 そうだ、俺は自分の無実を証明したいと思っていたんだと思い出せば男は机に肘を付き頬杖を書けば緩く口元に円を描く 「 知っている。その無実を証明したくて此処に来たんだろ 」 『 ……そうだ、俺は自分で此処に来た 』 会社をクビになったままはいい 新しく就職した職場で上司は目の前で赤く染まり死んでいた けれど、何故牢屋にいる筈の俺が此処にいるんだ? 『 ……あれ?何故、俺は此処に来れたんだ 』 俺は確かに罪のない事で牢屋に入った迄は分かるだがそれ以外は全く思い出せない事に固まれば男は目を細めた 「 其を知るには御前の協力が必要だ、自分が何者かも知りたいだろ? 」 『 しり、たい……教えて欲しい!どんなことでも俺は知りたいんだ! 』 無実が証明出来れば俺は其でいいと頷けば彼は見惚れるほど整った顔立ちで僅かに笑った
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加