死神と誰かの記憶

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◆ "此処"に来た原因が近付く度に悠希の心は乱れていく まるで見たくないように 「 落ち着け! 」 『 あぁあっ!!! 』 「 っ……ジョン……やってくれ…… 」 俺の仕事は相談者の過去の記憶を思い出させ、そしてどんな結末だろうと"満足"してもらう必要がある 狂ったように暴れて何処か遠くを見る悠希の手首と首を掴み俺は首筋へと噛み付き肉を引き裂き飲み込んだ 痛みに目を見開く彼に顔を近付け首へと噛み付くよう促せば痛みに堪えるよう俺の首へと噛み付いてきた 其でいいと、思えば背後からジョンが鞘から刀を抜く音が聞こえる 「 いくよ、マスター…… 」 「 っ……! 」 胸に貫く痛みに眉を下げポタポタと口から溢れ落ちる血は気を失った悠希を汚さないよう口元へと片手で抑え血を吐く 「 ゴホッ、ゴホッ…… 」 少し飛ぶのが遅れそうだと眉を寄せながら溢れる血が手を汚し刀が引き抜かれればジョンは悲しげにもう一度心臓へと目掛けて刀を突き刺した 「 一回で殺せなくてごめん、マスター 」 「 ……本当、下手くそだな 」 血を吐き出し倒れた俺に彼は涙を堪え刀を抜けば鞘へと戻した 「 マスター、必ず戻ってきてね…… 」 「 ……マスターって案外丈夫だから一発じゃ死んでくれないのよね…… 」 「 本当……死ぬ方も辛いけど毎回、殺す俺達も辛いよ 」 知っていて尚、任せてしまう 俺が自ら命を落とすには時間が掛かりすぎて余りよく無い為に人の手で殺される方が痛みはほんの数秒で気絶の方が早い そして心臓が止まり脳が停止し身体が完全に動かなく成った所で意識は悠希の過去へと飛ぶ 「( 何処だ……刑務所か )」 此所は何処だろうか、其よりも先に悠希を探す必要があると辺りに視線を向ける 誰しも死んだ感覚は嫌なもんで壁に背を付き落ち着くまでに時間はかかる 血の気が引くような感覚と胸に刺さる刀の痛み等が薄れればやっと歩け悠希を探す 何時も傍に移動できる訳でもなく離れてしまうことはよくある それか彼の方が先に目を覚まして勝手に歩いているか "俺"が見なければ意味がないのに、と思うが仕方無い 何せ相手は歩き回るのが好きな奴だからな…… 「( 居た…… )」 悠希は面会室に立っていた 彼の後ろから近付けば目の前には父親と最近の彼の姿があった 『 そうだ……父さんは……釈放されるんだ…… 』 「( 嗚呼……そうだったのか…… )」 何度か悠希が自分で俺の元まで来たことを自覚する迄に何度も過去を飛んでいた時に"見た"男は悠希の父親だったと今、気付いた 彼は震える様子を見ればこの後に上手く移動できれば"結論"は分かる 『 っ…… 』 「 傍に居てやる、大丈夫だ 」 『 ルカ…… 』 悠希は俺の身体を抱き締め、そして場面は変わった 彼は何時ものように仕事へと行けば其処には上司の姿は無かった "彼"が最初に見たのは"彼"自身だったと言う事だ 「 御前とあの女のせいで……俺は20年以上牢に入れられていた……許さない、許さない!! 」 「 父さん……っ!!! 」 『 くっ……!! 』 身体に強く抱き締め顔を埋める悠希に俺は頭を撫でながらその結論を見た そして包丁を持っていた父親に殺された彼は血溜まりの中に膝を付き倒れた 「 警察だ!!そこを動くな!!! 」 「 ぐっ!! 」 彼はまだ耳は聞こえていたのだろう、取り抑えられる父親と自分を間違えてしまうほどに 警察は彼の首元に触れ緩く首を振った 「 死亡が確認された…… 」 「 この方の身元になるもなは? 」 「 特に…… 」 警察は彼の持ち物を全て事件の一つとして持ち帰り彼の身体は一旦病院へと行き そのまま遺族に迎えられる事もなく霊安室に入りその後は…… 薄れ、ゆっくりと目を開ければ涙を流す悠希の姿があった 他のジョンやエルザは顔をそらす これが"俺達"の仕事だ 「 ……思い出したようだな 」 『 ……俺は、死んで、たんだ…… 』 俺の存在は死人にとって唯一思いが通じて傍にいるには安心できる存在だろう だからこそ浮遊して歩き回って記憶をなくした死人……霊は俺に助けを求めてくる 「 嗚呼、そうだな…… 」 『 ルカは、知ってたんだね…… 』 「 嗚呼…… 」 霊は思い出したくて仕方無い、それがどんなに辛い過去だろうが自分の存在があったことを 俺は其を思い出させてから満足して貰う必要がある 無駄な感情を捨ててるつもりだが、 どうやら俺は悠希に特別な想いを抱いてしまったようだ…… 優しく抱き締め頭を撫でる俺に彼は腕を回し顔を埋めた 『 ルカ……ありがと……。最後に、御願い……聞いてくれる? 』 「 なんだ…… 」 『 ルカの、本当の……名前はなに? 』 「 ……ルカ・グレイト・モルテ……死神だ……そいつ等は俺の使いの者だ。御前はちゃんと……俺が天界に連れていってやる…… 」 死神は死者の魂が善か悪かを"見る"必要がある 其々死神のやり方は色々あるが俺は血肉の記憶を辿り死を繰り返し過去を見る死神だ 『 ルカには変わりないんだね……うん、なんか満足したら疲れたな……ゆっくり休む 』 「 嗚呼、おやすみ…… 」 俺の腕の中で眠りに淡い光に包まれる悠希は一つの光となる ゆっくりと立ち上がり俺はコートを棚引かせ片手に黒く大きな鎖のついた鎌を持つ 「「 逝ってらっしゃい……マスター 」」 「 逝ってくる 」 此所は人の生と死の狭間 迷う者が安らぎを求めてやってくる 壊れた廃墟も全て人の造りなす"記憶" 屋上に腰を下ろした俺は片手にもった光を上に向け息を吹き掛ければ立ち止まっていた魂は目的を終え天界へと昇っていく 受け取ったと会津が来れば視線を落とした 「 マスター、ごめん。次のお客さん 」 「 嗚呼……直ぐに"行くさ" 」 もし、迷えば俺の元にやってこい そうすれば道案内ぐらいはしてやるよ 悠希、御前の今後はずっと見守っていてやる ………… ……………… …………………… 「 っ……なん、で…… 」 目を覚ました時には大粒の涙を流していた 悠希と呼ばれた子を第三者の視点で見たり、彼自身の立場になってみたりした夢 そして、ルカと名を付けた死神は何度も記憶を見せるために自らを仲間によって一度殺される必要があった 夢……? 日々のストレスで疲れてるんでしょうって出たんだが、 それ以外に逆になにがあるんだ いや……これは本当に、誰かの記憶なのか……? 俺には分からないな……。
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