ごめんなさいしか言えない奴隷

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アルが奴隷を連れて行ったのは、知り合いの医者のところだった。 医者はアルの連れてきた奴隷を見て目を丸くした。 「こいつは、随分と弱った奴隷を買ったもんだなぁ」 「どうせ生贄だからな。別にどうでもいいと思ったんだが」 アルはバツが悪そうに言った。 医者は奴隷を診て小さくため息をついた。 「ま、ただの栄養失調だろう。ただ胃腸が弱って食事が出来ないんだ。何日か預からせて貰うよ。お前じゃ繊細な食事させてやれないだろ。硬いりんご丸ごと食べさせそうだしな」 図星な事を言われてアルは少しムッとした。 「まあじゃあ任せる。早めにどうにかしてくれよ。こいつは仕事に使うんだからな」 そう言い残してアルは医者の家を後にした。 そんなアルの背中に向かって 「ごめんなさい」 と奴隷が呟いたが、アルは無視することにした。
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