ごめんなさいしか言えない奴隷

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※※※ 1週間後、奴隷は医者に付き添われてアルの家に帰ってきた。 アルは、1週間ぶりの奴隷を見て目を丸くした。 まだ細いものの、人間らしい体格になっていたし、肌も小綺麗になっていた。さらにボサボサの髪もキレイに切り揃えられていた。 「おう、人間らしくなったじゃねえか」 アルはそう奴隷に笑いかけた。 奴隷は少しだけ笑うかのように口角を上げたが、すぐに 「ごめんなさい」 と小さく頭を下げた。 アルはつまらなそうに鼻をならした。 「何だよ、ごめんなさいって。帰ってきたんだから『ただいま』くらい言えねえのかよ」 「ただいま?」 奴隷は首を傾げる。 医者は苦笑いしながらアルに言った。 「いままで帰る家の無かった奴隷に、それは残酷だろうよ」 「あ?」 どこが残酷なのだ、とアルは訝しがった。 「まあいい。世話になったな」 「全然、商売だからな」 そう言って医者はアルに請求書を差し出した。 アルはその請求書を見て目を丸くした。 「おいお前、何の冗談だこの値段は」 「正規の値段だよ。ま、これに懲りたら安物買いは避けることだね。一銭もまけないよ」 医者はニコニコしながらアルの家を去っていった。 「くそ、お前のせいで無駄な金がかかったぞ」 アルは奴隷を睨みつける。 「ただいま」 「そこはごめんなさいだぞ」 アルは軽く奴隷を小突いた。
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