ごめんなさいしか言えない奴隷

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「おい、生きてるか」 アルは、手に抱えた奴隷をペチペチと叩く。しかし奴隷は目を覚まさない。 相当痛めつけられたのだろう。身体は傷だらけだ。 アルは家に急いで戻る。 医者の所へ行こうかと思ったが、今は追われている身で迷惑は掛けられない。 冷たい水を用意し、奴隷の顔を拭いてやる。 「バカだな。こんなになるまで我慢しやがって」 アルは、目をつぶったままの奴隷を優しく撫でる。 「おい、帰ってこれたんだぞ。もう我慢しなくていいんだぞ。だから起きろ」 アルはそう言って、奴隷を優しく抱きしめた。身体は冷たく、アルはゾッとした。 「おい、奴隷のくせに冷たくなるな。お前は俺の湯たんぽだろ。早く起きろ、なぁ」 アルは奴隷をさらに抱きしめた。 「……めんな……い」 耳元で声がして、慌ててアルは奴隷を離した。 「おい、おきてるのか!?」 アルは奴隷の顔を見つめた。うっすらと目を開けている。 「……めん……さい」 「ごめんなさいはやめろバカ」 アルの言葉に、奴隷は少し考えて言った。 「ただいま」 「ああ、正解だ。その言葉だ。ようやく正解したな」 アルは嬉しそうに笑った。 「おかえり」
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