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心霊事件
幽刃探偵事務所は基本的に夜に営業している。
所長の幽刃アスカは朝に弱いからだ。
探偵事務所はとある古びたビルの2階にある。舞い込んでくる事件は、普通の探偵事務所では扱いきれない案件だ。
それは心霊事件。
幽霊やら心霊現象に頭を抱える依頼人が足を運ぶ。
夕方に依頼人がやってきたら、そのまま夜にかけて事件解決に動く。
事務所はアンティーク和家具が多いが、白い3人掛けの洋風ソファーや同じタイプの1人掛けソファーもあり、和洋折衷という印象。
部屋の隅にはオープンキッチン。新品のようにきれいなのは、アスカが普段から料理をしないからだろう。
ソファーの前に置かれているテーブルや、奥にある作業机もきれいに整頓されている。
「あの……すみません」
毎日依頼人が来るわけではないけれど、どうやら今日は事件が舞い込んできたらしい。
時刻は20時すぎ。
事件の持ち主によって鳴らされたドアベルは、バラエティー番組を見て爆笑していた所長の耳にも届いた。
笑いすぎて出てきた涙を拭いながらアスカが振り返る。
「はいどうぞ。おや、随分と寝不足なご様子で」
依頼人は50~60代くらいの男性で、青いラインが入った半袖の白いポロシャツに黒のジーンズを履いていた。白髪が8割ほどを締める髪はオールバックにされている。
目の下には大きな隈があり、顔色もいいとは言い難かった。
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