最悪な夜

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 それなのに、ヤンに襲われそうになった時と今。困ったことに、感じるものが全然違うのだ。  シオンに触られるのは嫌じゃないし、むしろ早くそうして欲しかった。そんなことを考えてしまった自分に驚き、小さく震えながらユノはシオンをじっと見つめる。 「シオンが作り変えていってるのって、私の身体だけ……?」 「どういう意味だ?」 「その……感情のコントロールというか、心を操ったりとか……」 「そこまで干渉できるわけないだろう。俺ができるのは君の生態を自分に近づけることくらいだ」  きっと、その言葉に嘘はないのだろう。  ほっと胸を撫で下ろし、ユノは再びシオンの瞳をじっと見つめる。  この気持ちが作られたものじゃないのなら、今から言う自分の気持ちも、きっと一つも嘘はない。 「……私、シオンのことが好きなんだと思う」 「は?」  ここに連れてこられた時点で、それはプロポーズのようなものだと受け取ってしまった。  だからこそ、シオンのこんな反応は予想外だ。意味が分からないとでも言いたげに眉を寄せられ、ユノは一瞬言葉に詰まる。  好きって言えば喜んでくれるんじゃないだろうかと、無意識のうちに考えていた自分に恥ずかしくなった。  告白みたいなことを言ってしまったけれど、シオン的にはそういうつもりじゃなかったのだろうか。 「め、迷惑……?」 「はは、まさか。君がそう言ってくれて、俺は普通に嬉しいが?」 「……本当に?」 「でもまあ、俺の方はそんなに可愛らしい言葉で済む感情じゃないけどなぁ?」 「へ?」  シオンに抱き上げられると同時に部屋の奥へと連れていかれ、初めて入るその部屋の中心でユノは下ろされる。  大きなベッドに座らされている現状に、今から何をするのかなんて考えなくても分かった。 「まあ、君が嫌がっていないなら俺としても助かる。どうせもう帰せないんだ。ゆっくりと時間をかけていいから、俺と生きる覚悟を固めてくれ」  嬉しそうな顔を向けられると愛しくて、胸の辺りが苦しくなる。  人間じゃなくなったはずのユノの心臓が、きゅうっと小さく悲鳴を上げた。
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