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その荷物の中に縄のようなものが見えてぎょっとする。あまり武闘派には見えないけれど、もし不審者を見つけたら一人で捕まえる気でいたのだろうか。
「たとえ陛下に害を為す気がなくとも、正式な手続きをせずに本宮内に人を入れるのは重罪だと知っていますか?」
「ぞ……存じております」
「分かっていて外からの者を手引きしていると?」
言われた意味を理解した瞬間、ぐらりと足元が揺れたような気がした。
一体どこまで、何を知られているのだろうか。
恐らくヤンが言っている不審者とはシオンのことで、この離れの近くで誰かがシオンを目撃でもしたのだろう。
たとえ顔をしっかり見ていなくとも、髪色だけでシオンは十分に目立つのだ。皇宮の関係者でないことなんて誰が見ても明らかである。
「あ、え……その……」
「男を買っているのか恋人なのかは知りませんが、頻繁に誰か呼んでいますね。最近になって寝具を頻繁に……念入りに洗うことが増えているようですし、汚すような行為をする相手ということでしょうか?」
ヤンにそう言われた瞬間、ユノの頬がカッと赤くなる。
いやもう本当に洗っている理由は勘ぐられている通りであり、言い訳のしようがない。だからといって正直に肯定するわけにもいかず、下手くそな言い訳が思わずユノの口をついた。
「あ、う……その、布団を洗っているのは、熱くなってきたので寝汗が……」
「ほぉ。昨夜ここを通りかかった時、いくいくいくと悲鳴のような貴女の叫びを聞きましたが?」
「……っ」
寝具には汗も染み込んでいるし、言ったことは決して間違いではない。
しかしそこまで把握されているとなると、これ以上は何を言っても無意味だろう。
自分の顔が真っ赤になっていることなんて鏡で確認しなくても分かった。
「……っその、なんと説明すればいいか……」
頭の中がぐちゃぐちゃで、上手く口が回らない。
不審者を本宮内に引き入れているわけではないし、皇帝に何かをするつもりもない。借りている場所を汚していることは申し訳ないと思っているし、その件に関してはシオンに話して対策を考える。
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