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しかしその説明をするには、まずシオンのことを話さなければならないのだ。
しかしこんな話、どう言えばちゃんと伝わるというのだろうか。
シオンは人間の姿になることができて、猫の姿を維持する力を供給するために抱かれているだなんて、あまりにも現実離れしていて嘘のような話だ。
ヤンが信じてくれるとは到底思えなかった。
「……っあの、不審者を引き入れているつもりはなくて、そもそも私の部屋に来ているのは内部の人間で……あ、人間ではないかもしれないけど、信じてもらえないかもしれないですが、最初は猫で……」
「いいです。聞くだけ無駄なので」
冷たい声で咎められ、その瞬間にユノはぐっと押し黙る。
正直に話しても、嘘をついて真実を誤魔化そうとしているようにしか聞こえないだろう。上手く説明できていないことは、ユノ自身もよく分かっていた。
「……ご、ごめんなさい。でも、あの」
「言い訳は不要です。こっちを見た方が早い」
「きゃっ!」
急に伸ばされた手に襟元を引っ張られ、ユノの首筋と胸元がヤンの前で晒される。
目の前の男はただ静かに、ユノの肌を冷めたような目で見下ろしていた。
(……どうしよう。最悪だ)
ユノの身体には、シオンに残された鬱血痕や噛み跡がある。少しでも服を乱されたら見えてしまうそれは、首にも胸にも広がっているのだ。
どういう時につく痕なのかなんて、考えなくても分かるだろう。
こんなの、誤魔化しようがない。
「そんな身体で、よく嘘がつけましたね?」
「……っ、その、本宮の外から男性を連れ込んだわけではないんです。本当です」
「ああ、もう結構ですよ。言い訳を聞きにきたわけではないので」
そう言われても、誤解されたままではヤンのことを帰せない。
どうにか説明をしようとユノが頭の中で文章を組み立てているなか、ヤンが持参した荷物を無表情でユノに手渡す。
「……え?」
これは、開けろということなのだろうか。
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