最悪な夜

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 ヤンが部屋からいなくなり扉が閉められた瞬間、シオンの纏う雰囲気がまた少し変わったような気がする。 「シオン……?」 「はは、そそられる格好させられてるなぁ。アイツの手でされたのかと思うと、全く面白くはないが」  ユノだって、何一つ面白いとは思っていない。  助けに来てくれたことはありがたいけれど、そもそもこうなった原因はシオンにあると思う。  じとりとユノが睨むと「分かってる」と軽い調子で言われ、シオンが縄を解いてくれた。  拘束を解かれてすぐ、とりあえず肌を隠すように衣服を簡単に正す。きっちり着たわけではないけれど、シオンの前でなら多少は乱れた格好でも構わないだろう。  それに今は、服装を整えるよりも先に、シオンに聞いておきたいことがあった。 「……ねえ、シオン」 「ん?」  さっきのヤンとの会話の中で、シオンは少しおかしなことを言っていたような気がする。  ユノの身体を作り変えているとかどうとか、そんな話。もしそれが言葉通りの意味だとしたら、このまま黙っているなんてできない。  いつもしていることはシオンの力を溜めるためで、ユノが生気を与える行為なのだと、そう聞かされていたはずだ。  自分の身体が作り変えられているだとか、そんな話は聞いていない。 「……シオンって、私に何かしているの?」 「うん? 何かっていうのは?」 「なんか……私の身体を変えてるとか、そういう話をしていたから……」  そこまで言われて、シオンもようやく先ほどの自分の言葉を思い出したのだろう。 「ああ」と返事をくれたと思ったら今度は軽く吹き出し、楽しそうに笑い始めた。 「ふっ、はは。なんだ、そんなことか」 「な、なんで笑うの?」 「いや。真剣な顔で何を言うかと思えば、それだけかと思ってな」  ユノの方は真剣に話しているつもりなのに、こんな風に笑われるなんて解せない。  再度シオンの名を呼ぶと、すぐに笑うのは止めてくれた。紫色の瞳が楽しそうに細められ、ゆっくりとユノの方へ向けられる。
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