最悪な夜

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「はは……本当、可愛いなぁ。こんな行為で力が溜まるなんて、君は本気で思っていたのか?」 「っ、だって……あんなに恥ずかしいの、後処理とかも面倒なのに頻繁にするし、する必要があるからだと思ってて……」 「恥ずかしいのに付き合ってくれて偉いなぁ。君が協力的で俺も助かってる」  話が噛み合わず、褒められているはずなのに何にも嬉しいと思えない。  ただ、ユノに黙ってシオンは何かをしているのだろうと、シオンの雰囲気でそれだけは肌で感じた。   「私がシオンに協力してるのは、定期的に力の供給をしない所為で前みたいに猫に戻れなくなったら私も困るからだよ。……必要がない行為ならしたくない」 「ははっ。俺はあの姿になれなくても別に困りはしないし、そろそろこの場所から去ってもいいと思っているが?」 「は……?」 「俺が君を抱いてるのは、君を連れていく準備だからなぁ」  伸ばされたシオンの指がユノの腹に触れ、ゆっくりとした動きでそこを撫でる。  ぞわりとしたものがユノの背中を駆け、思わず一歩身を引いてしまった。 「相当な量を君の中で出してるんだ。俺のが混じって、少しずつ君の身体が作り変えられていっても不思議じゃないと思わないか?」 「待って、なに……」 「君がヒトじゃなくなった方が、俺としてはいろいろと手を出しやすい」 「本当に待って。わ、分かんないよ……」  シオンの言っている意味が本気で分からない。  自分の姿を変えることも、空間を移動することも出来ないのだ。シオンと同じようなことは何一つできず、ヒトじゃなくなっていると言われても、ユノにはまったく自覚がない。 「ああ、さっきので分からなかったか? 少し乱暴にされても特に痛みは感じず、無理なく受け入れることができるんだ。君だって、少しは変化を感じているだろう?」 「は……」  そんなの、何度もシオンと身体を重ねているから、ただ慣れていってるだけなのだと思っていた。  少しずつ慣らされて、広げられて、だから奥まで入っても苦しくないのだと、そう思っていたのだ。  初めての時と比べたら、随分簡単に奥まで入るようになった。今日ヤンにされたことも、だから痛くないのだと思い込んでいた。  しかし、シオンに言われて少しだけ思い出す。  切り傷や、擦り傷。日常の中でついた小さな傷の治りが、確かに以前よりもずっと早くなっている。
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