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他の者には見向きもしないシオンに対して、高嶺の花だという者までいるのだから驚く。
俺もいつかあの子を撫でてみたいとか、あの美しい瞳で見つめられたいなどと言う者が続出していた。
これが人間の女性でなくてよかったと心底思う。これはシオンの性格にもよるだろうが、もしもシオンが悪女だったらおそらく国が傾いている。
一月が経った頃にはユノの噂もすっかり無くなっていて、シオンの世話係として本宮内での生活にも馴染んできた。
あのシオン様が懐くなんて凄すぎる……! と、ユノを尊敬している人までいるらしい。一体どうしてそうなったのか。シオンがあまりにも尊ばれていて不思議である。
とにもかくにも、ユノはシオンと暮らせる今の生活を満喫していた。
どうしてもシオンと共に寝たいという皇帝の希望があり、夜は一人で寝ているけれど、日中はシオンがユノのところに来たがるお陰でほとんどの時間を一緒に過ごせている。本宮から出ることが許されないため少し窮屈ではあるけれど、今まで村で仕事をしていた時間を勉強に充て、これまでは理解できなかった難解な本を読む楽しみも増えた。
――いつか皇宮で働く人のように、自分も何かできるようになるだろうか。
ただの平民が抱くには大それた目標かもしれないが、日に日にそんなことを思うようにもなった。
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