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教室に入って見渡すと、窓際に沙穂の姿を見つけた。
午後からの授業の時、いつも沙穂はわたしより先に来ている。
もしかしたら沙穂は授業が始まるよりずっと早く、下宿している親戚の家を出ているのかもしれない。
「沙穂! これ、頼まれてたライブのチケット」
「ありがとう! 持つべきものはコネだね」
「いつも誰と行ってるの?」
「同担の子と」
「わたしも知ってる子?」
「由希の知らない子。そんな顔しなくても心配いらないよ。同じアイドルグループ好きの子で、もう何度もライブに行ってるから」
「だったらいいけど……誘ってくれたらわたしも行くよ?」
「ちゃんと全曲覚えて来てくれる? 一緒にペンライト振ってくれる? うちわ作れる? ライブの前後は聖地巡礼付き合ってくれる?」
「あー……」
「そういうこと。好きな子で集まった方が盛り上がるから。由希の方は? そろそろパソコン届くんじゃなかった?」
「それね、届いたら白石くんがゲームの設定するのに家へ来ることになった」
「へぇ。長岡くんは入れてあげなかったのにその子は入れてあげるんだ?」
「高校生だから、まぁ気づかないかな、なんて思って」
「ふふん」
「何?」
「別に」
「沙穂の思ってるようなことは全然ないからね?」
「つまんない」
「面白がらないでよ。カップケーキ食べる? アーモンドプードルがたっぷり入ったやつ」
「食べる!」
「沙穂が食べてくれるから作り甲斐があるよ」
「次は甘いものが好きな彼氏作ってよね。そうじゃないとわたしが太っていくばっかりだから」
「彼氏は当分いらないから、沙穂がんばって食べて」
「そんなこと言って、その人のことばかり考えてしまうような相手がすぐに現れるかもよ?」
「ないない。全然、想像できない」
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