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「スーパーモリオを1面もクリアできない、ってアレ、冗談じゃなかったんですか……」
「……本当だけど?」
白石くんに睨まれた。
「それでもやりたいんですか?」
「やりたい!」
「スーパーモリオはどういう状況でクリアできないんですか?」
「メダルを取るのをあきらめて、敵の攻撃をひたすら避けることに集中したら、最後のボスキャラまでは行けるの……でも、最後は向こうの攻撃を避けながら、こっちも攻撃しなくちゃいけないでしょ? それが……ね?」
今度は呆然とした顔をしている。
「メダルもとらないで、敵も倒さないって……意味があるんですか?」
「しょうがないよね。そうしないとボスキャラまで行けないんだから」
「今、少し……責任を感じています」
「責任? どうして?」
「ここまで酷いとは思っていなくて、パソコン一式揃えさせてしまったから」
「がんばるよ? 黒属性になりたいから」
「黒……黒は、全ての属性の力をマスターして初めて選択できる属性だから……」
「知ってる。調べたから。これは、練習あるのみだね」
「再プレイ」のボタンを押すと、またさっきと同じ草原に出た。
フラフラとしながら前に進むと、またさっきと同じところに魔物がいた。
「まだ序盤も序盤で、まだ1番最初の村にも辿り着けてないのにもう1時間って、どうやったらここまで出来ないのか理解に苦しみます」
心なしか白石くんの機嫌が……
「ずっと付き合わせてごめんね。あとは、自分でなんとかするから」
「これ、自分で何とかってレベルじゃないから」
「でも、1匹目は倒せたから……」
「……同じ魔物倒すのに1時間……って……向こう、ずっと同じ動きしかしてなかったと思うけど?」
「そうだった?」
「これだと一生かかっても最初の属性すらマスターできないと思う」
「やってもいないのに決めつけないで」
「いや、わかるから。自分でも気づいてるでしょ? 無理って」
「簡単に無理とか言わないで。まだわからないでしょ?」
「やってるの見たから言ってるんですよ!」
「でも本気度10だから!」
自分が、こんなふうに言い返したりするとは思わなかった。
白石くんは、最初唖然とした表情をしていたものの、やがて笑い始めた。
めちゃくちゃ笑われた。
「わたし、真剣なんだから、無理だなんて決めつけないで」
その言葉に、白石くんはもっと笑いすぎて、目に涙を浮かべた。
「わかりました。僕が責任持ちます」
責任……って?
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