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一通りサッカーの話が済むと、ようやく別の話になった。
「明日、夜食べに行こうよ」
「でも、明日はわたしの方が授業終わるの遅い日だから」
「いいよ。待っとく。いつもの売店の前でどう?」
「また1時間以上待たせることになるよ? いつもだから悪いよ」
「どこかで時間潰して、10分前くらいになったら行くようにしてるから気にしないで」
一瞬の間。
「由希の部屋、見てみたいな」
声のトーンが違う。
でも、それには気づかないフリをする。
「散らかってて恥ずかしいから」
「僕たち付き合ってもう半年になると思うんだけど……」
「ねぇ、12時から何か見るってさっき言ってなかった?」
「そうだ! サッカー見るんだった。由希、また明日学校で」
「じゃあね」
「由希は早く寝ろよ」
「おやすみなさい」
電話を切ってキッチンへ行くと、逆さになったままの型に手をふれてみた。
まだ少し温かい。
完全に冷めるまでこのままにしておかないと……
テレビをつけてみたものの、面白そうな番組がなくて、Youstreamのチャンネルにした。
いつも見ているお菓子作り動画「小麦の部屋」が更新されていたので、それを再生して、随分前に淹れたコーヒを少し飲んだ。
もうすっかり冷めてる。
コーヒーの入っているマグを持ってキッチンへ行くと、冷蔵庫の中にあった牛乳をマグに足した。
動画はカヌレの作り方だったけれど、一時停止をしていなかったから、テレビの前に戻った頃には、もう名前の由来とか材料の説明も終わっていて、焦がしバターが出来上がったところだった。
カヌレは作ったことがないから型を持ってないなぁ、と思いながら見ているうちに気がついたら寝てしまっていた……
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