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家に帰っても、白石くんと水玉の傘の女の子のことが頭から離れなかった。 わたしは、白石くんのことを何も知らない。 何か作ろう。 そう思って、一番に浮かんだのはシフォンケーキ。 2人は同級生かな…… 卵白と卵黄を分けようとして、キッチンの角にコンっと卵を当てたら、力の加減を誤ってしまったみたいで、ぐしゃっと壊れてしまった。 「あ……」 キッチン台からぽたぽたとこぼれ落ちる卵を見て、慌ててキッチンペーパーで床に落ちた卵を拭いた。 順番が違う。 先にキッチンの上の卵を拭かないと、床を拭いてもまた上からぽたぽたとこぼれている。 キッチンの上を拭いて、もう一度床を拭いた。 家まで送ったんだよね。 それからもう一度、今度はウェットテイッシュで拭いた。 冷蔵庫から新しい卵を1つ出すと、気を付けながら卵を割った。 今度は失敗することなく、卵黄と卵白に分けられたボウルが2つ用意できた。 お菓子を作っている間は、いつもお菓子のことしか考えないのに、ふとした瞬間に今日見たことが頭の中に浮かんでしまう。 生地を型に入れて、温めておいたオーブンに入れると、使った道具を片付けた。 何度も作っているレシピで失敗なんかしたことがない。 それなのに、焼き上がったシフォンケーキは明らかに膨らみが足らなかった。 多分、中にも空洞ができている。 きっと、押したらそのままぺちゃんこになって、もう元には戻らない。
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