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白石くんとコンビニの控室で一緒になった時、沙穂の言っていたことが頭に浮かんで、真っ直ぐに白石くんの顔を見ることができなかった。
本当にシフトをわたしに合わせてるの?
「明日もシフト入ってるみたいですけど、連休全部バイトって、暇すぎじゃないですか?」
「えっ?」
「そんなに驚かなくても」
「ごめん。そういう白石くんも暇なんじゃないの?」
「僕はそこまで暇じゃないです」
天気の話をするみたいに、さりげなく……
「白石くんって、彼女いるの?」
明るく、なんでもないことのように。
「いません」
「いないんだぁ」
だったら、あの雨の日に見た水玉の傘の女の子は誰?
親しそうだったよ?
すっきりするかと思ったら、新たな疑問が生まれただけになってしまった。
「何か問題ありますか?」
「モテそうなのにいないなんて不思議だなぁて思っただけ」
「できないんじゃなくて、作らないだけですから」
「そのセリフよく聞くよね」
「今の言い方微妙にムカつきます」
「気のせいだよ〜」
オンラインゲームに興味を持ったのは偶然だった。
やってみたら何かが変わるかもしれないと、なぜだか思った。
本当に、何かが、少しづつ変わっていった。
変わってしまった。
長岡くんが烏丸さんといても気にならなかったのに……
あの雨の日、白石くんの濡れた肩はずっと目に焼き付いて離れない。
「友達が泊まりに来てたって言ってましたけど、大学の友達ですか?」
「中高大とずっと一緒の友達」
「由希さん、学校は共学だったんですか?」
「中高一貫の女子校」
「じゃあ、泊まりに来てたのは女の人ですね?」
「そうだけど、何?」
「聞いてみただけです。先に行ってます」
先に控室を出て行った白石くんを慌てて追いかけた。
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