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連休の最終日、バイトへ行く支度をしている間も、デスクの上のスマホは何度か切れてはまた時間をおいて振動していた。
スマホを裏返して、ゆったりとしたジャージ素材のワンピースから、ジーンズに長袖のTシャツを着て、その上にカーデを羽織った。
「おはようございます」
バックヤードを通って控室へ行くと、ドアをノックする。
誰もいないことを確認して中に入ると、自分のロッカーに荷物を入れた。
上だけ家から持ってきた洗い立てのユニフォームを上に着ると、イスに座ってスマホを眺めた。
着信がいっぱい……
全部、長岡くんから。
出ないといつまでもかかってくるということ?
ドアをノックする音がしてからドアノブが回った。
「おはよーございます」
声と共に入って来たのは、白石くんだった。
「連続で由希さん」
「連続って、シフトが同じになるのは2日ぶりだと思うけど?」
「昨日の夜……っていうか、明け方までずっと2人きりで過ごしたのに」
「それ、言い方気をつけようね。知らない人が聞いたら誤解される」
「僕に『ずっと側にいてね♡』って言ってたの誰ですか?」
「た、確かにゲームしてた時、ちょっと似たようなこと言ったかもだけど、ハートまでは言ってない!」
「素直じゃないですよね。『コタがいないとダメなの』なんて言葉で連日誘ってくるくせに」
「言い方……コタの中でわたしが言ったこと脳内変換されてない?」
「違いました?」
「……似たようなことは言ったかもしれない」
「ほら。由希さんのせいで勉強する時間もない」
「は、反省した。反省する。コタの勉強の邪魔をしないように……」
「しないように?」
「一人でがんばる」
「嘘です。由希さんが誘ってこなくてもゲームしてると思う。勉強なんてまだやる気になれないから」
「まだって……」
「イマイチ大学行く意味が見出せないから。大学行って彼女ができても、ちゅーが嫌だから別れるとか言われたら面白くないし」
「コタくーん? そーゆーのペラペラ喋らないでくれるかなぁ?」
「僕が真面目に勉強始めたら、どうするんですか? ぼっちでイベントクリア出来ませんよね?」
「さっきから……態度悪いよ?」
「HARU、オレ今から脱ぐけど、裸見る?」
「見ない! リアルでHARUって呼ばない! エラそうな口きかない!」
「さっきからリアルでコタって呼んでたくせに」
「ごめ――」
「コタでいいですよ。孝太郎でもいい。何なら僕の裸も見てっていいですよ、由希さん」
白石くんは不敵な笑みを見せた。
「先にお店に出てますね、白石くん!」
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