もやもや

3/6
前へ
/76ページ
次へ
窓の外はすっかり暗くなっていた。 5コマ目の授業が終わる時間になると、夏の間はまだ明るいものの、秋になると日はすっかり落ちてしまっているから暗い。 ぴったり5時50分に授業が終わり、教室を出たところで沙穂が言った。 「夜、食べて帰らない?」 「ごめん、今日は長岡くんと約束してる」 「そっか、じゃあわたしは帰るね」 「また誘って」 沙穂は手を振ると少し歩いてから、思い出したように振り返った。 「バイトまだやってるんだよね?」 「やってるよ」 「そこに男の子いないの?」 「いるけど、どうして?」 「ゲーム、詳しいかもよ?」 「そうだね! 聞いてみる! ありがとう!」 「うん。じゃあね」 「バイバイ」 沙穂を見送ってから、長岡くんとの待ち合わせ場所へ急いだ。 文学部のわたしと社会学部の長岡くんとは、いつも両学部の校舎の真ん中にある売店の前で待ち合わせをしていた。 外は暗いから、校舎の廊下を突き当りまで行ったところの出入口を使った。 そこから外へ出ると、少し先に売店が見える。 今日はわたしの方が1コマ授業が多いから、長岡くんを1時間以上待たせていることになる。 授業の終わる時間が一緒の日に待ち合わせをしようと言うのに、長岡くんは笑って「そんなのいいよ。待ってる間も楽しいから」と言う。 でも、これからだんだん寒くなってくるから、待ち合わせ場所を変えた方がいいんじゃないかと思った。 会った時にその話をしよう…… 長岡くんに「付き合って」と言われた時は、サークルの飲み会で何度か話したことがある程度でしかなかった人だったので驚いた。 最初は、よく知らない人だったし断るつもりでいた。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加