616人が本棚に入れています
本棚に追加
そして迎えたクリスマス。
いつものように家族が私の誕生日を祝ってくれた。
毎年同じことだけど、やっぱりうれしい。おめでとう、と言ってもらえることや、ケーキのキャンドルの火を吹き消す瞬間とか。
ああ、私はまたひとつ大人になったんだなあ、と感慨深くなる。
またひとつ、近づいた。あの人との距離。
そう思うと幸福な気持ちで満たされる。
そして、同時に襲ってくるタイムリミット。先生と過ごせる時間はもう限られている。卒業したらきっと、二度と会うことはないだろう。
先生は結婚をして、幸せになるんだ。
私は社会に出て、きっと別の誰かと出会って、結婚をすることになるだろう。
私たちは永遠に、運命が交わることはない。
その夜はなかなか寝つけなかった。ベッドに仰向けになり天井を見つめたまま、さまざまな考えが頭をよぎった。
今夜、先生は婚約者と一緒に過ごしている。
大人の世界ってどんなだろう。
私は恋人がいたこともないし、二次元の情報で得た知識しかないからリアルはどんな感じなのかまったくわからない。
そもそも付き合うってどういうことなのかな。
毎日一緒に帰ったり、休日に遊園地へ行ったり、お弁当を持って公園デートなんかしたり、手をつないだり、もしかしてキスとか。
いろいろと想像して恥ずかしくなり、頭から布団をかぶってしばらく悶えた。そしてまた布団からそっと顔を出した。視線の先にある天井に先生の顔が浮かぶ。
最初のコメントを投稿しよう!