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もしも先生が私と同じ歳だったら。
もしも先生が私と同じクラスの生徒だったら。
もしも先生が私と付き合ってくれたりしたら。
そんな絶対に叶わないことを何度考えたことだろう。
クリスマスの夜、私はベッドの中で羊を数えながら彼のことを思い、明け方にようやく眠ったような気がする。
少し切なく、苦しい一年が幕を下ろした。
しかし、年が明けると感傷に浸っている場合ではなかった。受験生はみな戦いなのだ。もちろん私も。
私にとって数学はある種の救いとなってくれた。無心に問題を解いているときは他のことが頭に流れ込んでこない。脳内には数式が並んでいた。
余計な思考を遮断するには別の何かで埋めればいい。私の場合はそれが数学だったのだ。
昔から、物事が順調にいかないときにこそ底力がわいてくる傾向がある。つまり、恋愛がうまくいかないという事象は私にとって最大限の能力を発揮することになり、それは別の意味で非常に役立ってくれた。
第一志望の大学受験の日、問題を解いたときに合格を確信した。
進路が決まり、両親も先生も喜んでくれた。もちろん私もうれしかった。
同時に襲ってくるのは別れという現実。
思い返せば私は今まで先生に冷たい態度を取ってきた。それなのに彼はとてもやさしく指導して、私の進路を導いてくれたのだ。
せめて最後に勇気を出したいと思った。
私は手紙を書くことにした。
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