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私の頭上で鐘が鳴りはじめました。都合のいい未来が視えてくる。
「いつも大人びて見えるが、そうでない部分もあるのだなあと」
彼の発言に私の未来は遠ざかる。
今のはどういう意味だろう。うっすら悪い予感がする。
私が何かを言う前に先生が続けた。
「かわいい生徒のようで」
うはあっ! やっぱりか。
一番聞きたくなかった言葉です。
「先生、私もう三十路手前ですよ。さすがにそれは女子高生に失礼です」
そして私にも失礼です。
あの頃よりずっと成長しているのに。
だってほら、胸だってこんなに大きく……ないか(がっかり)
目線を下に向けたあと、そのまま先生へと移動する。
彼は少しばかり首を傾げる。
悪気はないのだろう。相変わらずの天然ぶりにもやもや感が込み上げてきます。
「いや、上山は年齢よりずっと若く見えるよ。気にするな」
気にするよ。
若いと言われてうれしいのは、先生以外の人のときだけです。
あなたには大人の私を見てほしいのに。
「最高の褒め言葉をありがとうございます」
淡々とお礼を口にした。
素直に「今の私を見て」と言えよ。
何度も胸中で言い聞かせてみたが実現できない臆病者です。
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