研究所は今日も平和

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「キャーーーッ!」 今度は研究室の方から絹を切り裂くような悲鳴が聞こえ、ワタシは慌ててそちらに向かう。 「どうしたんです?!」 「来てくれたの、良かった……」 ワタシを見て安心したかのように笑う彼女だが、少し表情が固い。研究室から廊下に飛び出して震えながら、指した先をゆっくりと見た。 「む、むしが……、虫が!」 「どこから入ってきたんでしょう?」 そこにいたのは小さな小さな、虫が一匹。 どうにか捕まえ手のひらに乗せて、窓から外に放つとすぐにその姿は見えなくなった。 「その手でさわらないでよ!」 思春期の子どもみたいな反応を見せる彼女を安心させるためにも、キッチンにまた、とんぼ返りで慌てて手を洗いに行く。 パシャパシャと流れる水が冷たい。 ついでに、廊下に点々と残った粉だらけのスリッパの痕跡を、濡らした雑巾で消していく。 全く世話が焼けると、呆れながらも、やはり憎めない。
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