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4.保護
時は少し遡る。
聡美は廃墟の周辺で不審者の捜索していた。
そこで、兄の葬儀の時に参列していた、見覚えのある男の子を見かける。
「拓海……くん?」
「聡美叔母さん?」
「拓海くん、誘拐されたんじゃ?」
「なんの話? 僕、誘拐なんかされてないよ」
「え? どういうこと?」
「拓海くん、今朝から行方がわからないって大騒ぎだったんだけど」
「そうなの? でも、僕は昨日と今日、学校がお休みだったから、幸子ちゃん家に泊まって、その後ぶらぶら散歩してただけだよ?」
「幸子ちゃん家って?」
「こっちだよ」
聡美は拓海に赤松家へ案内される。
「ここだよ」
聡美はインターホンを鳴らした。
扉が開き、女性が出てくる。
「どちら様でしょうか?」
聡美は探偵手帳を提示した。
「探偵?」
「拓海くんがこちらに泊まっていたってのは本当ですか?」
「ええ、確かに泊めましたけど、どうかしたんですか?」
「実は今朝から拓海くんを誘拐したっていう脅迫状が出てて大騒ぎだったんですよ」
「そ、そうなんですか?」
聡美はその反応に怪訝さを感じた。
「赤松さん、今までどこにいました?」
「え?」
「私が来るまでの間、どこにいました?」
「……家にいましたけども」
「そうですか……」
聡美は納得いかない様子だった。
「ママー! お腹空いたー!」
と、家から女の子が出てくる。
「おや、君が幸子ちゃん?」
「そうだよ。お姉さんは?」
「拓海くんの親戚よ」
へえ、と返事をして、赤松の手を掴む幸子。
「それより、ママ、お腹空いたよー」
「はいはい、わかったわよ」
幸子を連れて家の中へ戻っていく赤松。
「あれ? 幸子ちゃんのお母さん、さっきコンビニに行くって出て行ったのになんで家にいたって嘘ついたんだろう?」
聡美はスマホを取り出すと、埼玉県警本部に電話をした。
過去に起きた拓海くん誘拐事件の捜査資料によると、警察が逮捕した被疑者の男、赤松 雄三に家族がいることが記録されていた。雄三は当時、拓海を誘拐し、身代金を要求した。しかし、受け渡し場所に向かっている間に、明夫が拓海を解放し、現場から逃した。そして、現場に様子を見に来た共犯者に、彼は殺害されたのである。殺害した犯人は直後にその場から逃走。そして、誘拐に失敗した腹いせに、その共犯者が今し方、恵子の前に現れて銃殺したのではないか、聡美はそう推理した。
「まだ推測の段階だわ。もっと証拠を固めないと。とりあえず、病院にでも行くか」
聡美は恵子が運ばれた病院へと向かう。
手術室の前で、総一がへたり込んでいる。
「総一さん、拓海くんを保護……?」
「今それどころじゃない。恵子が、恵子が!」
「え?」
「最善を尽くしましたが……」
「恵子さん、亡くなったんですか?」
「……………………」
ドクターは沈黙する。
聡美は両手を強く握り込む。
怒りが沸々と込み上げてきた。
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