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エピローグ
聡美は恵子の警察葬に参列している。
喪主は総一。
拓海は恵子の死に号泣していた。
恵子は霊柩車で運ばれ、火葬場へ移動し、遺骨となるために火葬炉へと入れられる。
遺骨になるまでの会食の小一時間、聡美は総一と話をする。
「社長さん、こんな時に何ですけど、私たち夫婦になりませんか? 拓海くんを一人で育てるのも大変でしょう?」
「え?」
「私ね、実は社長さんに一目惚れしちゃって。恵子さんには悪いけど、この人と結婚したいって思っちゃったの」
「……考えさせてくれないかな」
「うん」
聡美はスマホをチェックする。
メールを受信していることに気づく。
(メール?)
聡美はメールを開いた。
差出人は恵子からだった。
日付が殺害された一週間後の設定で送信されていた。
内容は、「このメールを読んでいるころには、私はもうこの世にはいないでしょう。聡美さんに私からのお願いがあります。総一さんと拓海のことを託します。私はもう、そう長くはないと思うから。死んだ後のことはわからないけど、きっと明夫さんとも向こうで再会できると思うから、思い残すことはないわ。明夫さん、向こうでも警察官やってるのかな? なんてね。それじゃあ、いつかまた、会う日まで」と、書かれていた。
同じタイミングで、総一もスマホのメールを確認している。
メールにはこう書かれている。
「総一さん、先に逝ってしまってごめんなさい。明夫さんを亡くした時、あなたがかけてくれたあの時の言葉にはとても救われたわ。ありがとう。あなたと拓海を残して逝くのは辛いけど、仕方のないことだよね。あなたにメールをする前、聡美さんにも送っておいたんだけど、聡美さんと一緒に拓海のこと、お願いしますね。お空の上から見守ってます。恵子」
総一はスマホをしまい、聡美を見つめる。
「探偵さん、僕と、結婚してください」
「いいの本当に?」
「恵子との最後の約束だからね」
「そっか。うん、わかった」
葬儀を終え、しばらく経ったある日、聡美はウェディングドレスに身を包み、教会で牧師の前に立っていた。
「病める時も健やかなる時も、愛し合うことを誓いますか?」
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