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色黒く毛長くして
現場は既に規制線が引かれていたが、美臼高原の中でも立ち入り禁止区域が現場だった為、野次馬達を気にすることなく。美臼高原のパーキングに車を停めて。
すんなりと現場を目指せた。
駐車場には先に到着していた足痕係、鑑識係の姿を見かけた。
現場が保全されてから俺達は現場に行ける。
そして早くも鑑識課員の姿も見かけ、遺留物の採取活動を始めているところだった。
「進展が早いな。殺しじゃないのか?」
外に出るとキンと刺すような空気が漂い、コートの襟をぐっと寄せて、革手袋の代わりに白い手袋を身に付けた。
現場は高原とは言ってもハイキングコースとは離れていて、この先にある草木生い茂る小さな沢が現場らしい。
禁止区域なだけあって周りは鬱蒼としているし、傾斜もあって歩きにくい。
しかも警察関係者が忙しなく行ったり来たりしていて。転けないように、ぶつからないように歩くのに、皆苦労している様子だった。俺もすり減った靴底に力を込めて先現場に急ぐ。
「周防さん。この禁止区域って熊が出やすい場所なんですよね」
「そうだ。オマケにヒルもいるらしいから気をつけろよ」
俺の後ろをおっかなびっくり歩いている天野に声を掛けると、目を丸くして寄りいっそう慎重に歩き出した。
ふと苦笑しながらも、歩くと視界がぱっと開けた。
そしてささやかな水の流れる音。
谷にも沢にもなり切れなかった、少し開けた場所だった。しかし見晴らしがよく。周りの紅葉樹達が美しく見れる場所だと思った。
その中央に景色など見向きもせずに人が集まっている。捜査員に黄色いテープ、ブルーシートの囲い。あれがが事件の中心。
後ろで少し息を切らしている天野に声を掛けて、ブルーシートに近づき。鑑識官達に挨拶をして中に入るとすぐに手を合わした。
鑑識官によって、ライトに照らされたご遺体と対面する。
初感。それは本当に変な死体。
禿頭頭の中年の男性が大の字に寝転がり。その上にこんもりと紅葉が被されていた。紅葉の山から出た手足の先が妙に生々しい。
その周りには石が積まれているので、何か山の生贄にでもされたのかのと思ってしまった。
本当になんだこれ。と思ったのは天野も一緒で。
「これは。意味が分かりませんが殺人事件。しかも猟奇殺人でしょうか。あと、現場の遺留物はどこに」
と、言った直後。
「違うよ。これは死体遺棄。遺留物は既に回収されたあとだよぉ」とすぐに返事を返したのは天野の後ろに居た、小柄な子泣き爺みたいな男だった。
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