32人が本棚に入れています
本棚に追加
よく人の言をなし
青い作業服を着た子泣き爺の突然の登場に、天野はギョッとしつつ。チラッと俺を見たので、簡単に紹介することにした。
「久しぶりだな。永吉さん。天野。この方はな、俺ら刑事より、この現場においてはトップの権力を持つ検視官様だ」
こいつはついている。
英吉さんは俺とウマが合う人で、俺が新米デカの頃からお世話になっている人だった。
しかも観察眼はピカイチ。事件の状況は英吉さんに話を聞く方が早いと思った。
しかし、その前に英吉さんに質問する。
「死体遺棄をしたのは、ここで倒れていたと言う女性によるものか?」
「うん」
「それはこの死体の奥さんか?」
「うん」
「奥さんは体に重大な怪我を負っているか?」
「ううん」
それだけ聞けば充分。
今だ戸惑っている天野に声を掛ける。
「天野。もう一度遺体を見て、頭に状況を叩きこんだら直ぐに病院に迎え。俺が追って遺体の報告をする」
天野を見つめるとその顔には『私、何が何だかわかりませんが!』と書いてあったが、三秒ほど見つめると「分かりました」と、素直に遺体に向かって行った。
その光景を見てから英吉さんに。ちょっと顔を貸してくれと、ブルーシートの囲いの中から外に連れ出すのだった。
最初のコメントを投稿しよう!