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うーん、誰だろう。
誰だか分からないけど、一瞬トイレに行ったからなあ。
その隙に事務所に入って盗むことはできるか。
「あのー」
「盗りましたって言う気になったか?」
「僕ではなくて――」
「言い訳するな!」
店長は聞く耳を持たなかった。
時給1,200円だから、600円分の時間だ。
タイムカードは店長が切ってしまったから、もうもらえないけれど、600円分の時間を罵倒され続けた。
つくづく惨めな気分にさせられた。
あースゴく惨めだ。
さっさと消えてしまいたい。
コイツも消えてしまえばいいのにな。
「聞いてんのか!」
バンッ――。
机を叩かれて、僕の体がビクリと跳ねた。
その瞬間だと思う。
まん丸の心が、とうとう壊れた。
うーん、壊れた、かな?
もっと良い言い方があると思うんだけど。
「お、おいなんだ、座れ」
あー、アレだ。
殻を破ったんだ。
机のペン立てに手を伸ばした僕は、適当に掴んで振り抜いた。
ザシュッ――。
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