冬、そして

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冬、そして

 枯草色に染まる小さな山のてっぺんには薬の魔女と黒猫が寄り添うように暮らしています。  魔女は、山のてっぺんを照らすお日さまで薬草を育てています。木枯らしの寒さに負けない薬草はシロップ薬を作るのにぴったりです。  大切に育てていた薬草をすべて刈り取りシロップでとろりと煮詰めて作る魔女の薬は、冬の流行り風邪にとてもよく効くと評判です。  今日は山のふもとの村から薬を取りにくる日です。  黒猫がにゃあにゃあとどきどきしている魔女を呼びました。 「こんにちは、魔女さん。すっかり冬だね」 「いらっしゃい。ええ、とうとう初雪が降ったわね。今日の薬はこれでいいかしら?」  村の薬屋さんは魔女のお得意さまです。  黒猫も薬屋さんに抱っこしてもらって満足そうにしています。  魔女はシロップ薬がゆらりと揺れる瓶を箱にいっぱい詰めて渡します。  赤や橙や黄色や緑色、それに青や藍や紫色にゆらめくシロップは雨上がりにかがやく虹のようです。 「うん、ありがとう」 「どういたしまして──今日のおやつはなにも用意してないの」 「それなら僕の奥さん、すぐに家に帰ろう」 「うふふ、もちろんよろこんで」  魔女はなんにも用意しないで薬屋さんを待っていました。  魔女のお店に来たばかりの薬屋さんは魔女の家に鍵をかけると、奥さんの魔女、それに黒猫といっしょに、雪のちらつく小さな山のてっぺんをくだって村にある夫婦の家へ帰っていきました。  これから雪解けの春まで、二人と一匹は、赤い炎がやさしくはぜる暖炉の前であたたかな冬を過ごすのです。  薬の魔女は、春までお休みです。  おしまい
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