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俺は仕事を終えて家路に着いた。
ハードな仕事でくたくたになっていた。
家に入って、空気に話しかけるようにただいまと呟いた。
俺は一人暮らしなので、俺を迎えてくれる人はいないのは知っていた。
しかし、そこで予想外の声が聞こえた。
「おかえりなさい!」
俺はそう言って迎えてくれた人を激しく動揺しながら見つめた。
知らない綺麗な女性が眼前にいた。
「あんた誰だよ? あれ、俺は家を間違えたのか?」
「間違ってませんよ。私はあなたの妻です」
俺は言葉を失ってその場に立ち尽くした。
俺は訝しみながら、その人と話をした。
女性の名前は紗夜さんだと教えてもらった。
紗夜さんは俺と話しながらぼろぼろと涙を流していた。
俺と一緒に旅行した写真を見せてくれた。
紗夜さんは本当に俺の妻らしい。
俺は事態を受け入れようと頑張った。
たとえ妻を忘れるほど俺の認知症が進んでいたとしても。
俺は二十代という若さで認知症を患ったようだ。
俺は妻と一緒にゆっくりと苦しい人生を歩んだ。
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