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待ち合わせ場所の駅につくと、まだ誰もきていなかった。
家を出るのが遅くなったと思っていたけど、意外と早くついたみたい。忘れ物がないかチェックしようかな。
海水浴グッズを入れている大きなバッグは、お父さんに借りたアウトドアブランド『マウン10』のトートバッグ。山のロゴマーク付き♪ それにしても朝のハプニングには参ったなぁ。けど、よく考えたら蟻がいたってことは砂糖を運んだかもしれないんだよね? てことは、砂糖は減ってる。よっしゃ、恋のおまじない完璧!
小さくガッツポーズをしていると、クスクスと笑い声が聞こえた。
「おはよう美海、なに朝からガッツポーズしてんの?」
笑い声の主は、拓海だった。
んな! いきなりの二人きりシチュ! 緊張するって! これ、おまじないの効果?
「た、拓海! おはよう、ガッツポーズなんてしてないよ~」
「うそつけ」
ごまかす私のおでこを指で軽く小突いて、拓海はさわやかな笑顔を浮かべる。
ちょっと待って! なんなのなんなの! キュン死しちゃう!
拓海はドギマギしている私の顔から、私の持っている大きなトートバッグに視線を移した。
「荷物、多いな。なに入ってんの?」
怪訝な顔で尋ねる拓海の反応に、大きなトートバッグがなんだか恥ずかしくなって、顔がじんわり火照った。
「えっとね……いろいろ。日焼け止めとか、タオルとか、着替えもだし、浮き輪や絆創膏、レジャーシートも」
「ああ、レジャーシートかぁ、俺、自分の荷物だけで、そういうの全然考えてなかった。ごめん」
「ううん、大丈夫。私たち、みんな一枚持ってくることにしてるから。パラソルはレンタルしようって話してたんだけど」
「うん。そうしよう」
そう言いながら、拓海が私のトートバッグに手をかけた。
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