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「ん? どしたの拓海」
「これ、持つよ」
「いいの?」
戸惑っているうちに、拓海はひょいっとトートバッグを手に取り、肩にかけた。
「ありがと」
「ん、おっもー!」
「え、そんなに? うそ!?」
「うっそ~! あはは!」
「ちょ……も~!」
おどける拓海のさりげない優しさに、気づけば私の緊張はすっかりほどけていた。
この優しさは……『マウン10』の山のロゴマークの効果? 効果なのーぉ?
私は心の中で叫んだ。
しばらくすると、「ごめん! 遅くなった!」と、拓海の友達の周平と啓太が、駅の反対側から駆け寄ってきた。その後すぐに、私の友達の歩美と香菜も合流した。
拓海は、歩美と香菜の大きなバッグを見ると、二人に近寄り、「持つよ」とバッグを手に取った。そして、そのバッグを周平と啓太に渡し、「おまえらも持て」と笑いながら言った。
「拓海、優しいよね~」
「妹がいるからじゃない?」
歩美と香菜が微笑みながら、拓海を見つめている。
そう。拓海はみんなに優しい。わかってたけど、その優しさが私だけのものじゃないと再認識すると少し淋しくなった。
私だけに優しくしてよ、拓海。
「おーい美海? ぼーっとして、どうしたの? 男子、先にいっちゃったよ?」
「あ、ごめん。いこ!」
私は笑顔を作りながら、駅のホームへと向かった。
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