美食義賊

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 俺がやってる料理屋に、刑事さんがやってきた。美術館での盗難事件で大変らしい。チーズリゾットを作って出してやると、刑事さんは満足そうに平らげた。 「店は古いし、安いメニューばかりだが、美味いじゃないか」  リゾットの隠し味は大粒の真珠。セイウチの咆哮を魔法で酒にして、跳躍麦の酢を混ぜる。この調味液に三時間漬けると、真珠は食べられるようになる。牡蠣よりミルキーで味が濃く、料理に磯の風味とコクを添えたいときに最適だ。  魔術師にして料理人、料理人にして義賊。こうして俺は、普通なら金持ち連中しか食えないものを、ボロ店で出している。刑事さんも、まさかお目当ての品が自分の腹におさまるなんて、夢にも思わないだろうな!
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