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外の騒がしい声で目が覚めた。
見慣れた天井に、家に戻れたのだと実感して一筋の涙を流す。
「ご心配おかけしました。こうやって下山できたのも、皆さんが壱を信じて下さっているおかげです。ありがとうございます」とおっ母の声がする。
そろそろ起きて支度をしようと布団をめくったその時、青い顔をしたユキさんが戸の前に立っていることに気がついた。
「ユキさん…!ご心配おかけして申し訳ありません」
私が駆け寄ろうとすると、ユキさんは踵を返し飛び出した。
「ユキさん……!?」
私は草履を履いてユキさんを追いかけようとするが、寝起きで着物が乱れていることに気がつき正し、家を出た。
「フミ、起きたのかい。ユキが出て行ったから、まだ寝ているのかと思ったよ」
「おっ母!ユキさん、どこにいった?」
「えぇぇ?向こうの……桂様のお屋敷に続く小道に入っていったわよ」
桂様の?
それを聞いて心がざわつき始め、急ぎ足で後を追った。
ただ事ではないと感じたおっ母は、私の後を静かに着けてきた。
そして、もしかしたら今回の事件の真相に触れられるかもという好奇心で、近所の人たちがおっ母の後をこっそり追ってきていた。
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