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「何しているんだよ、お前!」
桂家の屋敷には入れそうになかったので塀の周りを歩いていると、塀の向こうからユキさんの声が聞こえた。
「あいつら、生きているじゃねぇか!」
「知らねぇよ!俺だって山で何かに背後から襲われたんだ!見ろ、この背中の傷を!」この声は……桂様の息子の源だ。
「何だよ、獣除けの巾着を持って行ったんじゃなかったのか」
「持って行ったさ!だけど……あっ痛ぅ…」
私はその会話を聞いて居てもたっても居られなくなり、もと来た道を戻った。
「フミ?慌ててどうしたの?」
少し離れて背後にいたおっ母や近所の人達には驚いたが、皆をおいて私は走り出す。
「ユキさんが来ているのでしょう、私をここに入れてください!」と屋敷の門番に訴える。
「何事じゃ」と騒ぎを聞きつけ桂様が現れた。
ユキさんは、私達が裁き山で死ぬのを望んでいた。
それはつまり、壱兄に罪を被せたいと思っているという事。
「フミ!後を付けてきたのか!?」とユキさんも屋敷から現れた。その後ろを青い顔して源が背中を庇いながらゆっくり歩いてきた。
「……お前は壱のところの!帰れ!罪人に用は無いわ!」
その桂様の言葉に、近所の人達が反発する。
「壱さんは無実よ!裁き山がそれを証明してくれたさ!」
おっ母は私をなだめるかのように、そっと背中をさする。
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