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その声を聞いて、私は外に飛び出そうとする。
「待て、フミ。お前は朝げの支度があるだろう。俺が話を聞いて来るから、ここで待ってろ」とユキさんは私を制し、走り去る。
三原さんが殺された……?
三原さんとは、壱兄の許嫁の夏さんの父親だ。
この村で一番美しく優しい夏さん。
昨夜から帰って来ない壱兄。
壱兄の身に恐ろしい事が起きたのではないかと、思わず身震いする。
壱兄、早く帰ってきて。
飲み過ぎた~、境内で寝てたよ、なんてフラフラしながら帰ってきて。
とうに仕事へ向かう時間も過ぎた頃、青い顔をしたおっ母を連れてユキさんが帰ってきた。
「……フミ、落ち着いて聞いてくれ。三原の親父さん殺害の一番の容疑者は……壱だ」
ユキさんのその言葉に、おっ母はその場で泣き崩れた。
「壱兄は!?壱兄がそれを認めているの!?」
「いや、壱はいない。ただ、遺体のそばで血の付いた凶器が見つかった。壱の……仕事道具のノミだ」
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