裁き山の主

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 ユキさんからの話を聞き終わると同時に、桂家で働く男衆がウチに押しかけて来た。 「今すぐ荷物をまとめろ。次の満月の日まであと半月。無実だとしても長丁場になるからそのつもりで支度しろ」と一緒にやってきた桂様が言った。  裁き山とは、村の外れにある山の事。  裁き山のどこかに小屋があり、その場所で満月の日まで生き抜くことが出来れば無実が証明されるというものだ。  罪を犯していれば、裁き山の『主』様が穢れを払うべく自ら手を下すと言われている。  ふもとから小屋までの道は桂家しか知らず、道中目隠しをして男衆に牽引されながら小屋を目指す。  裁き山には無数の獣が住み着いており、無理に下山すると必ず襲われる。  満月の夜にしか咲かない花『白月花(はくげつか)』が下山道の脇に植えられており、その花の香りは山の獣を遠ざけるため、下山の機会はその日に限定される。  村には昔からその風習があることを親から教えられてきたし、今までに何人もの罪人が裁き山へ送られてきたことを私でも知っている。  その中でも生きて帰ってきた者は……ごくわずかだ。  震えあがる弟ミトをなだめながら、私とおっ母は慌てて荷造りをする。  運悪く今の時期は農作物の収穫前であり、充分な蓄えが無かった。  手元の食料をかき集めてもせいぜい5日分。  
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