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その上、おっ母は昼げ用に蒸したイモを全部行李に入れ「壱が帰ってきた時に困らないように」と家に残す。
せめて私達の分は持って行っても良いのではと思ったが、壱兄を信じているなら口出ししてはいけないような気がしたので言うのをやめた。
ありがたいことに近所の方が「頑張って。壱さんの無実を信じているからね」と言って、少しずつ日持ちのしそうな干し物を差し入れてくれた。
皆もウチ同様収穫前で切り詰めたい時期だろうに、感謝しかない。
しかし、それでも家族3人が半月生き延びるには辛い生活となりそうだ。
男衆が荷台に乗せられるだけの荷物を乗せる。
「達者でな」と桂様は言い残し、去っていく。
荷造りを手伝ってくれたユキさんは「待っているから。無事を祈っているから」と見送ってくれた。
私達3人は腰に縄を巻かれ、裁き山のふもとまで荷台の後ろを歩かされた。
その姿はまるで罪人を引き連れていく様で、ただ無言で見守る村の人達の視線が辛かった。
まだ昼前にもかかわらず、黒い雲に覆われた不気味な雰囲気の裁き山。
山のふもとに辿り着くと、荷台は置いていくとのことで私達は荷を可能な限り背負わされた。一緒に登る男衆4人も手分けして荷を背負ってくれた。
「さぁ、歩け。ここからは険しい山道になるから、はぐれるんじゃねぇぞ」
私達に目隠しをしないので聞くと「女子供は良いんだよ。それよりしっかり歩けよ」と言ってくれた。
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